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シンの記憶

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千里眼の少年 第一章


 透視能力。現実の視界に惑わされぬよう目を閉じて、自我の範囲を、肉体の檻の外にまで拡げていくイメージ・・・周囲の空間が透けて見え、壁の向こう側にある物や、遠くの風景までもが、心の目で、鮮明に見えた。調子がいい時には、人々の細かな表情や、自然の中で風に揺れる木々の葉まで感じ取ることができた。

 解析能力。物に触れたり、目で見たりするだけでその内部構造や成分を理解することができる力だ。例えば、本を見ただけで、書かれている内容はもちろん、紙の素材やインクの成分、さらにはその本がどのように製本されたかまでが頭の中に浮かび上がった。

* * *


 僕は、望まれてこの世に生まれた。僕が生まれた時、父さんも母さんもすでに高齢だったため、彼らにとって僕の存在はまさに奇跡のようなものだった。それだけに、彼らの喜びはひとしおであり、僕に対する愛情もひときわ深かった。そして彼らは、幼児期の僕の行動に能力の片鱗を見つけると、いっそう喜んだ――・・・。

 僕には生まれつきの異能がある。透視と解析。二つの異能だ。透視の能力は360度、壁をすり抜けてはるか遠くのものまで見ることができ、解析の能力は、集中すればその物の性能や隠れた性質まで見通すことができた。

 この世界には稀に、異能者と呼ばれる者たちが生まれる。遺伝が関係しているらしいが、遠い隔世遺伝によって生まれることもあり、その出現はランダムに近く、予測は難しい。また、異能者が生まれたところで一般の家庭環境で理解されることは難しく、多くはその家庭に悲劇的な軋轢を生じさせ、あるいは親もろとも運命を狂わせる。

 そんな中で僕の両親は、この能力を当たり前のように受け入れてくれた。そして、むしろこの能力をより伸ばして高めるよう、様々な訓練を施してくれた。僕の能力の精度がここまで高まったのは、ひとえに母さんの訓練の賜物だ。父さんはジャーナリストで、仕事が忙しいらしくあまり家にいなかった。しかし、母さんは僕の能力が世間に知られないよう、そして僕が悪しき俗世に染まらぬよう、細心の注意を払いながら、僕に付きっきりで訓練を続けてくれた。父さんはそんな僕の能力を高く評価し、その可能性を信じてくれた。

 僕が5歳の頃には、解析の能力によって、ごく浅いところではあったが、人の思考まで覗けるようになっていた。その時、僕は父さんがジャーナリストなどではないことを知った。いや、ジャーナリストではあるのだが、それは世を忍ぶ仮の姿であり、夜な夜ななんらかの組織の仲間たちとともに怪物と戦っている――そんなヴィジョンが、僕には見えた。

 ある日、そのことを父さんに尋ねてみた。

「そうだ。父さんたちが所属しているのは、エグゼシスタという、悪い怪物どもからこの世界を守るための組織だ。おまえの能力は貴重なんだ。いずれおまえも、父さんたちの仲間になってくれるか?」

 僕の異能の目が父さんを見透かしたことには驚かれたが、父さんは気を悪くもせず、誇らしげにそう言った。僕もなんとなく誇らしくなり、笑顔でうなずいた。



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千里眼の少年 第二章


 僕は小学生になった。その頃、僕の存在は父さんの組織の中でも認知され始めており、夕方になると人気のない林の中の広場で戦闘訓練を施されるようになった。ひ弱な僕の体には筋肉はあまりつかなかったけれど、2つの異能とナイフを使えばその辺の大人には負ける気がしなかった。闇に潜む怪物たちと戦うための技術は、僕の体にしっかりと刻み込まれていった。

 毎朝、母の運転する車で、僕は学校へと向かう。校門をくぐると、手入れの行き届いた広大な前庭が広がる。校舎は白亜の建物で、大きな窓からは明るい日差しが差し込んでいた。教室には最新の設備が整っており、机や椅子も高級感が漂っていた。大学院にまで繋がる私立の一貫校であり、先生たちは熱心で、授業内容も充実していた。

 クラスメイトたちは、裕福な家庭の子供ばかりだった。彼らの会話は、最新のゲームや海外旅行、週末の家族の外出についての話題で満ちていた。僕はその中にいると、まるで異世界にいるような気がした。僕は生来引っ込み思案な性質であり、あまり彼らと親しくはならなかったが、クラスメイトが楽しそうに話す様子を見ていると、なんとなくうらやましいと思うこともあった。父さんとも母さんとも、僕にはそんな楽しい思い出がない。

 母さんは、僕が世間と接触しすぎることを避けていた。学校が終わると、すぐに家に連れ帰り、家での訓練や学習に集中させた。彼女の目には、僕の能力を最大限に引き出すことが最優先事項だったのだ。父さんも夜遅くまで仕事に追われており、家庭で過ごす時間は限られていた。そのため、僕の生活は学校と家の往復で成り立っていた。学校での華やかな日常と、家での厳しい訓練。この二つの世界の間で、僕は次第に自分自身の存在に疑問を感じ始めていた。果たして、この特異な生活が本当に僕のためになるのだろうか――。

 日に日に厳しくなる訓練に疲れ、僕は授業中に居眠りをしそうになった。重たいまぶたが閉じかけると、不意に僕の能力が何か感じたこともない存在を認識した。透視の精度を上げ、心の目を凝らす。あれは――?

 光を纏っているかのようなプラチナブロンドの、外にはねた髪。この世のものとは思えぬほど整った顔立ちの少女が見えた。場所は大学の研究室のようだった。誰もいないその場所で、彼女は熱心に論文のようなものを読んでいる。

 彼女の容姿には底知れぬ神々しさがあり、僕は心を奪われた。まるで天上の世界から降りて来たかのような雰囲気を漂わせる彼女に、僕はつい解析の能力まで使い、彼女の脳内の景色を盗み見た。

 その景色――・・・空は澄み渡り、金色の光が柔らかく降り注いでいた。浮かぶ雲は純白で、壮大な金色の城がそびえ立ち、美しい庭園や清らかな泉が広がっていた。鳥たちは歌い、花々が咲き誇り、まるで時間が止まったかのような、永遠の美しさを感じさせる光景だった。

 フッとビジョンが消えた。能力の限界だ。僕はそのまま居眠りしていたらしい。気づいたときには、先生の怒り顔が目の前にあった。

 先生の叱責に耳を傾けながらも、僕の心は別のところにあった。彼女の存在は一瞬の幻ではない。彼女は確かに存在し、きっと、あの美しい世界から来たのだ。彼女の意識から読み取った世界の光景は、僕の心に焼き付いたまま離れなかった。



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続きは2026年8月頃、アプリ内にて公開予定です。


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